
4連敗のあとの公式戦7連勝、そして2連敗。当たり前の話だが、改めてサッカーというスポーツの難しさを感じさせられている。
直近の公式戦9試合は、どこかで何かが違っていれば、いずれの試合も違った結果になった可能性もあるギリギリの戦いであったが、ポイントを押さえて7連勝したのがアビスパの実力なら、そこを押さえきれずに連敗したのもアビスパの力。ほんの少しのことで結果が大きく変わる難しさ。けれど、そのポイントを安定して押さえられるか否かが強いチームとそうでないチームとの差。それは小さな差に見えて実際には大きな差だ。
それでも、アビスパ福岡が確実に次の自分たちに向けて一歩ずつ進んでいるのは間違いない。昨シーズンは所属する現場スタッフ、選手の多くが新型コロナに感染するという事態に襲われギリギリまで残留争いに巻き込まれたが、今シーズンは開幕当初からコンディション不良者が続出する中で、現在は8位と中位をキープ。限られた人数で戦いながら天皇杯、ルヴァンカップカップでは2年連続してベスト8に進出していることなど、今シーズンの成績が証明している。
その一方で、乗り越えられていない壁の厚さを感じさせられたのが、新潟戦、京都戦の2試合だった。自分たちが思うような展開にならなかったときに早々と失点し、守りを固める相手を崩せないという攻守両面の脆さ。これはJ1復帰を果たしてから残る問題で、そんな状況をどのように変えていくのかが次なる自分たちになるための課題だと言える。
「単純に強度のところで上回られると、自分たちはそこに対して対処法が少ない、低い、そういう戦いになってしまうので、もう少し自分たちができるプレーの幅というのを持たないと、いろんなチームに、いろんな状況に対応できないなというのはひしひしと感じている」(長谷部茂利監督)
もちろん、敗れる時はそういうものだと言えばそれまでだが、試合はいつもいつも自分たちのリズムで進むわけではない。次の自分になるためには乗り越えなければならない壁だ。
そして今日(8/30)、アビスパは湘南との天皇杯準々決勝を迎える。
運動量、局面の強度を特長に持つチームであることをはじめ、2020年以降は3勝3分と結果だけを見ればアビスパに分があること、しかし、その内容はいずれも紙一重であったことなど、前節のリーグ戦で敗れた京都と同じような関係、シチュエーションで向かえる試合になる。その試合で過去と同じようなことを繰り返してしまうのか、それを跳ね返す戦いを見せるのか、そこに注目が集まる。
そんな試合に向けて長谷部監督は次のように話す。
「小手先とか、『あれとこれとでどうにかして』ということではなくて、自分たちが軸としているものを前面に出していくべきだと思う。だから間違っても5点取るようなことはほぼないし、たくさん取られることもないしというような戦いになると思うが、でもそれが自分たちの戦い方だと思うし、自分たちのスタイル。それを前面に出したい」
そして、京都戦に敗れた後、サポーターに挨拶する選手たちに大きな声援を送ったサポーターたちに触れて次のように続けた。
「次がある。水曜日に試合がある。ルヴァンカップがある。この状況は、選手が表現して勝ち取った、そしてサポーターが後押ししてアウェイまで来てくれて、それを勝ち取ったもの。だから、当然、楽しみにしてもらいたいし、期待してもらいたいし、選手たちは思う存分やってもらいたい」
アビスパに限らず、準々決勝に進出してきたチームには等しく優勝のチャンスがある。そして、アビスパの選手たちが口々に「星が欲しい」と話すのは、自分たちはまだ成長していかなければいけない立ち位置にいることは理解しながらも、夢や願望ではなく、具体的にそれを狙える力がついてきているという手ごたえあるからだ。もちろん、簡単ではない。実際に昨年の同大会ではJ2の甲府に敗れている。だからこそ、ピッチに立つ選手、ベンチスタートの選手、ベンチ外の選手を含めて、そしてアビスパに関わるすべての人たちと持てる力を最大限に発揮して湘南に挑む。
アビスパの歴史に新たな一歩を刻む試合は8月30日(水)19:00、ベスト電器スタジアムでキックオフされる。
[中倉一志=取材・文・写真]
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