Jリーグ・アビスパ福岡の情報をデイリーでお届けします

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【無料公開】受け入れがたいアクシデントの中で力を尽くしたアビスパ。その姿勢は次の試合につながる力:【中倉’s Voice】

220905 (2)

起こるはずのない3つのゴール
「いったい何が起こっているのだろう」
それが正直な感想だった。開始直後のアビスパの決定機のシーンを取材ノートに記録しながらピッチに目をやると、永石拓海と宮大樹が激しく交錯。倒れたまままったく動かない2人を見て、当然、ホイッスルが鳴るものだと思っていた。だが試合は続行。そして名古屋のゴールが生まれた。それでもゴールは認められないものだと思っていた。

あの流れの中で主審が即座に判断を下すのは難しいが、ゴールが決まるや否や、真っ先に2人のもとに駆け寄った姿から事態が深刻であることは理解しているのだろうと考えていた。競技規則に「競技者が重傷を負った場合、プレーを停止し、確実にその競技者を競技のフィールドから退出させる」と定められていることや、主審も副審も一般的に行われているゴールを示すジェスチャーをしていなかったこと、そしてVARと交信していたことなどから、倒れた時点でプレーを止めるべきかどうか確認していたと考えていたからだ。だがゴールは認められた。

そして21分、巷で話題になっているシーンが生まれる。クルークスが倒れていたのを見たレオ シルバ(名古屋)がプレーを中断するためにボールをラインの外に出し、プレー再開時に慣例に従って前嶋洋太がスローインを名古屋のGKに向かって返した。だが、このボールをルキアンがカット。そのままプレーを続けて中央へ折り返し、クルークスのゴールが生まれた。

選手が倒れて動けない場合、敵・味方に拘わらずボールを外に出してプレーを止め、プレー再開時にボールを出した相手にボールを返すのがサッカーでは紳士協定とされている。ルキアンのプレーは、名古屋の1点目が生まれた場面でもプレーを止めるべきではなかったかという抗議の表れだった。そして、長谷部監督はフェアプレーの精神に乗っ取って1点差の状態に戻すために名古屋に1点を返すことを指示。名古屋ボールのキックオフで始まったプレーに対して、アビスパの選手はプレーをせず、その中を永井謙佑(名古屋)がボールを運んでゴールを決めた。

これが通常では起こりえない3つのゴールの顛末だ。

恥じることは何もない
この3つのゴールに対して、様々なメディアがそれぞれの切り口で扱っている。正確に言えば、事の発端となったプレーに関しては、ほとんどのメディアがスルーしているのだが、プロがプロとしての責任を持って、何をどのように扱うのかを決めて発信したことに対して、私が何かを言う立場にはない。どのメディアであっても、そこにはプロとしての矜恃があるのだろうから、そういうメディアなのだという感想しかない。

ただ選手たちは、そんな試合の中で素晴らしい戦いをみせてくれた。不安定なジャッジに熱くなることもなく、ただ勝利のために戦った。そんな選手たちをファン、サポーターが力の限りに後押しする。胸に抱くのは、やりきれない想いを抑えてチームとともに戦うという強い想い。38分に名古屋に3点目を奪われても、その声は衰えることはない。いまやるべきはチームの勝利に向けて自分たちの力を注ぐこと。それは選手、ファン、サポーターに共通する想いだった。

そして後半、アビスパは4-4-2から3-4-2-1に立ち位置を変更。「サポーターの後押しを信じて最後まで戦おう」という長谷部監督の檄を受けてゴールを目指す。2点のリードを背景に、守備意識を高めてカウンターを狙う定石通りの戦い方をする名古屋の前にチャンスを作れない時間が続いたが、それでも57分、反撃の狼煙を挙げる。起点となったのは奈良竜樹の縦パス。そのボールを受けて右サイド深くに入り込んだクルークスがマイナスのクロスを送ると、そこへ走り込んできたのは平塚悠知。左足インサイドで捉えたボールがゴールネットを揺らした。

アビスパらしく戦った
ここからはアビスパのリズム。1点を守る意識が高くなったのか、下がり気味の名古屋に対して前へ出る。細かなミスが出てビッグチャンスにつながらないシーンも散見されるが、それでもただゴールを目指してボールを追う。67分に宮大樹が一発レッドで10人での戦いを強いられても、その勢いに変わりはない。1人少ないことを感じさせない運動量と強度で名古屋を押し込んで行く。86分にはジョン マリのシュートが右ポストを叩き、90分には湯澤のシュートが左ポストをかすめた。

だがゴールは遠かった。10分間のアディショナルタイムを経て試合終了のホイッスル。敗れたアビスパは15位に後退。試合消化数を考慮すれば勝ち続けた上で相手の結果を待つという苦しい状況に追い込まれた。それでも、この日のアビスパは最大出力で戦い続けた。ややもすれば殺伐とした荒れた試合になりかねない中、選手はもちろん、ファン、サポーターは勝利を目指して戦い続けた。一寸たりとも諦めることなく、スタジアム一体となって力の限りに戦った試合。それはまさにアビスパだった。

J1残留に向けて追い込まれたという事実に変わりはない。だが何かが決まったわけではない。ロッカールームを引き上げる選手たちの表情にも諦めの色はない。むしろ、この悔しさを次の試合に向けるという気持ちが伝わって来た。そして「勝点が取れなかったので、まったくもっていいゲームではないが全力は尽くした」という長谷部監督の言葉から伝わってきたのは正々堂々と戦ったというプライド。まだまだアビスパは戦える、そんな強い想いが伝わって来た。

何があっても戦い続ける
さて、やりきれない想いを力に変えてチームとともに戦ったファン、サポーターにとっては、傷口に塩を塗るような記事が多くのメディアから発信されている。嘘ではないが正確ではない記事に一言いいたくなる気持ちもあれば、名古屋の先制点のシーンに関して、日本サッカー協会やJリーグがどのような見解を持つのか明確に示してほしいという想いがあるのも当然のことだろう。スタジアムにいた者なら、その気持ちは痛いほど分かる。だが、我々が変えられるのは自分のことだけだ。

この日の試合に関して、長谷部監督が不平不満を口にしないのは、どんなことがあっても正々堂々と戦い、自分たちの手で自分たちの道を掴むという強い意志の表れ。そのために、今ある力のすべてを、まずは目の前の試合にぶつけるという意思表示だろう。厳しい状況は承知の上。その中で何ができるのか。アビスパとアビスパに関わるすべての人たちにそれが問われている。敵は他者ではなく自分自身。自分自身と向き合いながら勝利のために戦い続けること。それが唯一の答えだ。

[中倉一志=取材・文・写真]
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