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城後寿の献身

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【中倉一志=取材・文・写真】
富山戦での城後寿のプレーを見ながら、昨シーズン第31節神戸戦のことを思い出していた。

昨シーズンも、城後は様々なポジションで起用されていたが、この日は右SBでプレー。結果は0-4の敗戦だった。この試合に先立って行われた第28節のG大阪戦(アウェイ)では、固定したポジションを与えられずに遠藤保仁のマンマークに付いていたが、攻撃的なポジションならともかく、全く畑違いのポジションでプレーすることに対して相当ストレスが溜まっているのではないか思い、試合後に城後に声をかけた。自分には何もできることはないが、少しでも気が楽になってくれたらとの想いからだった。ところが、全く予期しない言葉が返ってきた。

「いろんなポジションで使われているということは、それだけ監督が自分を信頼してくれていることだと思うし、チームにとって必要だということ。自分にとっても、いい経験になっていると思うし、監督から信頼されているというのは選手にとってありがたいこと。自分はそれに応える責任があると思う」 この試合に敗れたことで、第26節から始まった上位陣との直接対決の成績は1勝1分4敗。愚痴のひとつも出ておかしくない時期だったが、そんなそぶりは全く見せなかった。

その言葉が偽りでも、建前でもないことは、その後の彼のプレーを見ていた方たちには分かってもらえるだろう。そして、今シーズン第13節の富山戦。再び右SBのポジションに立った城後は、その力をいかんなく発揮した。絶妙なポジショニングとタイミングで対峙する中島翔哉へのパスをカットし、1対1の局面では全く仕事をさせなかった。そのプレーの質の高さは、城後やサッカーを知らない人でさえもワクワクさせる素晴らしいものだった。

何より、そのすごさを感じていたのは直接対峙した中島だろう。中島は、いい意味で生意気な選手を育てることに定評がある東京Vの下部組織出身。その卓越したテクニックはJ2でもトップクラスの力がある。東京Vに在籍していた昨シーズンは21試合に出場して2得点。19歳ながら、今年行われたU-22アジア杯日本代表に選出され10番を背負ってプレーして3得点を記録。日本サッカー界の将来を嘱望される選手の1人だ。その中島が1対1のシーンで仕掛けようとさえもしなかった。いや、できなかったと言った方が正しいかもしれない。

失礼を承知でいえば、プロ入り後しばらくの間は、城後は、そのポテンシャルの高さに比して、自分の気持ちや想いをプレーで表現することは苦手な選手だったように思う。そんな彼の表情をガラリと変えたのが、2009年に負った左膝前十字靱帯損傷の怪我。城後自身も「良かったとは言わないが、あの怪我が自分に感謝することを思い出させてくれた。間違いなく自分にとってのターニングポイント」と話している。以来、彼は感謝の気持ちを背負って戦ってきた。その気持ちは、昨年発覚した経営危機で更に強くなったように見える。

敗れた時はもちろん、勝利した時でさえ、何よりも気にするのは、アビスパ福岡というチームを支えてくれる人たちに、何かを感じてもらえるプレーができたかどうかということ。自分たちの感謝の気持ちをプレーで表現できたかどうかということ。「勝てたからOKではない」と必ず口にし、そのために、いま自分がチームのためにやるべきことは何か、ただそれだけを考えてプレーする。本音を言えばゴールに近いところでプレーしたいという気持ちはあるはずだ。けれど、そんな姿勢を少しも感じさせない。その姿が見ている者の胸を打つ。

富山戦終了後のミックスゾーンで「ナイスプレー」と声をかけた。その言葉に振り向きながら「ありがとうございます」と答えた城後の笑顔が強く印象に残る。彼がいるチームを取材できて良かった、これからも彼のプレーを見るために練習場に、スタジアムに通える立場にあることがありがたい、改めてそう思えた。だからこそ、今シーズンが終わった時、城後と、彼とチームを支える人たちの笑顔が見たい。富山戦の城後のプレーは、そう思わせてくれるにふさわしいプレーだった。

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